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kiti

イラストレータ・工芸作家である建て主は、こどもたちをより自然豊かな環境で育てたいと願い、また仕事場・アトリエを備え、地域の人が集う教室も始めたいと都内から鎌倉への移住を考えていた。
やっと見つけた土地は2つの横穴式の石室がある急斜面の山が背景にある美しい場所であったが、7ヶ月半後には建物を竣工させなければいけないという厳しい条件付きだった。
逆算すると設計期間は1ヶ月程しかとれない。どこかでつまずいたら絶対に成立しない工程である。
すぐに構造家と相談し、短工期でローコストな構法を模索した。仕上げや家具など、後々手を加えていける部分は省いてコストの調整しろとし、建物の骨格となる部分に重点を置くことにした。
シンプルな箱とすれば計画は簡単になるが、これは単なる住宅ではない。仕事や創作の場、教室というパブリックな要素を含んだ様々な活動を同時に受け入れるには、適度な空間の多様さが必要だ。それには相応の「空間量」が不可欠で、スペース同士の緩やかな繋り、適切な距離感がなければとても窮屈なものになると感じた。そこで敷地に合わせて最大限の容積を確保し、その中に2.5層分のヴォリュームを入れた。階段を中心に東西二つに平面を分け、縦方向には半階分のスペースを1-2階間の南側、2階-屋根間の北側に挟むことで空間を引き延ばし“ズレ”を発生させた。
それぞれのスペースに立つと他のスペースが2つ、3つと現れ、その奥には山の緑や空の青が見える。誰かが音を出すと、廻りの壁を回折し多方面から聞こえてくる。半階の床下スペースはこどもが普通に歩ける高さで、格好の居場所になっている。
竣工後、構造用ラワン合板のままだった壁は家主によりクリアオイルが塗られ、玄関のポスト、こどもの勉強机なども次々制作され、2×10材の柱間の棚も徐々に取り付けられてきた。みな余った端材を有効利用してつくられているために奥行きや巾がちぐはぐだが、かわいらしい味わいがある。設計から竣工まではあっという間だったが、そのプロセスはまだまだ続いており、これからどのように変貌していくのかまだまだ楽しみである。

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用途:専用住宅
敷地面積:150.44㎡
建築面積:60.17㎡
延床面積:133.12㎡
構造・規模:木造在来工法 2*4工法 地上2階
竣工:2010年3月

構造設計:江尻建築構造設計事務所
施工:東湘建設

Photo:Daici Ano, Shinkenchikusha

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